反哲学史 (講談社学術文庫)

反哲学史 (講談社学術文庫)

 
パラパラと読む。

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いわゆる学校で教えてもらうような「哲学史」の内容でない。
「本質存在」と「事実存在」(実存)というキーワードを軸に読み解かれる哲学史。この点をポイントとして押さえるととても理解しやすい。

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木田元の著作には上記の二つの概念がチラホラでてくる。
「本質存在」が「それが何であるか」をあらわし、「事実存在」は「それが(それとして)ある」ということをあらわす。
(著者は端的に前者を「デアル」、後者を「ガアル」と示す事もある)

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中心テーマとしては、この両概念の平衡の歴史としての「形而上学」の歴史に対する「反」哲学はいかなるものであるか、が据えられ、その萌芽として、19世紀の思想家であるシェリングマルクスニーチェの三人が取り上げられている。

ヘーゲルは末恐ろしい。
人間の本質は「労働」にあるということ。
 
そのニュアンスは人間の自己としての単なる働きかけにあるとしても。つまり「仕事をする」という意味での「arbeit」ではないにしても、この語を選んだヘーゲルには未来を見たある直観があったのでないかとうがちたくなる。それは現行の高度資本主義社会における自己としての人間の行為を表現するにぴったりの概念であるからだ。150年前のヘーゲルの一撃。